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ぶし [は行]

 キンポウゲ科トリカブト属のサンヨウブシ、カワチブシ、ハクバブシ、カラフトブシなどの「ぶし」はトリカブト類の別名であり「附子」と書く。元々はトリカブト類の塊根のことで、茎の出ている母根を「烏頭(うず)」、母根についた新しい塊根を「附子」と書いて「ぶし」あるいは「ぶす」と読んだ。これらの塊根からは猛毒が得られ、毒自体も「附子」と呼ばれた。アイヌが矢毒として用いたことが知られている。「烏頭」もトリカブト類の別称なのだが、トリカブト類には標準和名にこの名を持つものはなく、なぜかヒメウズにその名が残っている。ヒメウズは無毒とは言い切れないが、少なくとも猛毒ではない。不細工な女性を指す蔑称に「ぶす」があるが、一説に、附子にやられると顔面神経が麻痺して無表情になるからという。あくまでも一説。

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カワチブシ 2013.8.14 奈良県大台ケ原

ぎん [か行]

 植物に銀色のようなメタリックカラーを期待するのには無理がある。銀といっても実際は白なのだが、あえて銀というにはそれなりの意味があるはずだ。まずはひとつの株に黄色と白の2色の花や実を付けることから「金銀」として使われているもの。2色の花を着けるスイカズラの仲間にはキンギンボク(ヒョウタンボク)があり、スイカズラも別名キンギンカと呼ばれる。他にはキンギンソウ、キンギンナスビがある。次は他の植物に「金」が付くものがあり、それと対となって銀が付くもの。キンランに対するギンラン、キンセンカにギンセンカ、キンバイソウにギンバイソウ、キンレイカにギンレイカなど、これが対かと思うほど形の違うものもある。そして残りは、ギンゴウカン(ギンネム)、シギンカラマツ、ギンリョウソウだが、これらには白では済ましがたい輝きや透明感がある。


※「銀」の付く植物
銀梅草:ギンバイソウ、金銀木:キンギンボク、キミノキンギンボク、金銀草:ナンバンキンギンソウ、キンギンソウ、金銀茄子:キンギンナスビ、銀鈴花:ミヤマタゴボウ(ギンレイカ)、シマギンレイカ、銀盞花:ギンセンカ、銀合歓:ギンゴウカン(ギンネム)、銀蘭:ギンラン、エゾギンラン、ササバギンラン、ニシダケササバギンラン、銀竜草:アキノギンリョウソウ、ギンリョウソウ、ベニバナギンリョウソウ、紫銀落葉松:シギンカラマツ

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ギンリョウソウ 2013.6.23 大阪府千早赤阪村

えび [あ行]

 世界一海老(えび)好きといわれる日本人。当然植物名にも「えび」が付くわけである。まずはエビネ、その根の形が海老に似ている。次はエビモ、海老の棲むところに生えるともいうが、波打った葉の形が海老に似ている。そしてエビヅル。しかし、葉の裏の赤褐色の毛が海老の色に似ているからというのは間違いで、この「えび」は海老に由来するものではなく、逆に海老の由来となったものである。漢字をあてるなら「葡萄」で、「ぶどう」と書いて「えび」と読ませる。「え」は古語で赤を意味し、「び」は実のことである。
 ヤマブドウはその昔エビカヅラと呼ばれていた。またアオツヅラフジの別名はカミエビである。これらのエビは赤い実のことで、その色から海にいる赤いおいしい生き物がエビと呼ばれるようになった。だからエビ色(葡萄色)といえばワインレッドのことで海老色ではないのだが、混同されている。
 話しを戻して、海老の付く植物の続き。エビアマモは花序が海老のように三日月型に反っているからといい、エビガラシダは乾燥して巻き込んだ羽片の様子が海老の殻に似ていることからという。最後はエビガライチゴ、茎や葉柄、萼(がく)に赤紫色の毛が密生する。しかし海老は連想しがたい。その様相は毛ガニである。

※「えび」の付く植物
海老根の仲間:アマミエビネ、キリシマエビネ、タマザキエビネ、エビネ、タカネエビネ、ハノジエビネ、カツウダケエビネ、アサヒエビネ、オオキリシマエビネ、キバナキリシマエビネ、スズフリエビネ、オナガエビネ、ユウヅルエビネ、サクラジマエビネ、リュウキュウエビネ、ナツエビネ、オクシリエビネ、キソエビネ、キエビネ、トクノシマエビネ、サルメンエビネ/海老藻の仲間:エビモ、ササエビモ、ヒロハノエビモ、ナガバエビモ/葡萄蔓の仲間:ケナシエビヅル、シチトウエビヅル、エビヅル、キクバエビヅル/その他:エビアマモ、エビガラシダ、エビガライチゴ

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エビガライチゴ 2013.7.13 大阪府岩湧山

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