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たんな [た行]

 タンナヤブマオ、タンナトリカブト、タンナサワフタギ、タンナヤマジソ、タンナヤマハハコ、タンナアカツツジ、タンナチョウセンヤマツツジなどの「たんな」は、韓国の済州島の古名「耽羅(たんな)」を意味するものである。耽羅は済州島の古代王国であり、15世紀初めに李氏朝鮮に併合されるまで存続した。「たんな」の名を持つ植物は済州島から九州、西日本までを生育地としていたのではと思われるが、今では日本ではごく限られた地域にだけ生育する希少種となっているものもある。済州島は朝鮮半島に比べれば温暖な気候であり、朝鮮半島に分布がないか、あるいは少ないので、冒頭の植物は、「チョウセン**」ではなく「タンナ**」と名付けられたのだろう。そういうことならタンナチョウセンヤマツツジという命名はなんともセンスが悪い。「たんな」を「丹那」と漢字表記する図鑑もあるが、音が同じ当て字と考えるべきだろう。「サイシュウトウ**」ではなく「タンナ**」とするのは、そのほうが奥ゆかしいからだろうか。野生蘭の大家にして山野草栽培の巨匠、鈴木吉五郎翁は、昭和10年に、済州島の山頂の岩場に産するツツジを、朝鮮の李王家の植物園から譲り受け、交互交配を重ねて「タンナゲンカイツツジ」を作出した、この名は鈴木翁の命名によるものである。
文献:合田隆行:山野草偉人伝-草匠の譜、山野草とミニ盆栽、53号、pp.36-37、2003.

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タンナサワフタギ 2013.6.23 金剛山

ちゃひき [た行]

 チャヒキを名乗る植物を環境省のリストからピックアップすると16種類ある。しかし、その中には元祖チャヒキの姿が見当たらない。チャヒキ達の名の元になったのはチャヒキグサなのだが、今ではその標準和名はカラスムギとなっている。「ちゃひき」は、お茶の葉を茶臼で挽いて抹茶にする「茶挽」のことであり、客の付かなかった暇な遊女はこれをやらされたとか。チャヒキグサの名前の由来は、山渓の『野に咲く花』には、「小穂に油をつけ、ウリの上にのせて息を吹きかけると茶臼をひくように回ることから」とある。妙に詳しいがなぜ回す必要があるかわからない。出典があるに違いないと思い、牧野の新日本植物図鑑を見ると、「子供がその穂を採り、油をつけてうりの上にのせ、吹けば茶を挽くように廻るので」とある。なるほど子供の遊びかと納得。しかし、油もうりも用意するのは面倒だ。気になるので古い牧野の図鑑も見てみると、「小兒其穗ヲ棌リ唾ヲ付ケシ爪ノ上ニ載セ之レヲ口ニテ吹ケバ茶臼ヲ挽ク如ク囘旋スルヲ以テ斯ク云ウ」とある。もともと‘油’は‘唾’で、‘うり’は‘つめ’であったようだ。試してみる。何とか回った。

[チャヒキの付く植物]
チャヒキグサ(カラスムギ)、アレチチャヒキ、ムクゲチャヒキ、オニチャヒキ、コスズメノチャヒキ、スズメノチャヒキ、オオチャヒキ、ハトノチャヒキ、ハマチャヒキ、ヒバリノチャヒキ、ヒゲナガスズメノチャヒキ、チャボチャヒキ、カラスノチャヒキ、アレチノチャヒキ、ウマノチャヒキ、クシロチャヒキ、ミサヤマチャヒキ

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チャヒキグサ(カラスムギ) 2014.4.23 堺市

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