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ふらさば [は行]

  昨今、ネット上での言葉の短縮がすさまじい。「あけおめ」は「あけましておめでとう」のことで、「ことよろ」は「今年もよろしく」である。それでは「ふらさば」は何でしょう?。
  言葉の短縮は今に始まったことではなく、日本人は昔から短縮が得意である。「ふらさば」の答えは「フランシェとサバチェ」であり、昭和の初め(1937)に奥山春季という植物学者が、フラサバソウのために作った短縮語である。フランシェとはフランスの植物学者フランシェ氏(Adrien Rene Franchet)であり、サバチェとは同じくサバチェ氏(Paul Amedee Ludovic Savatier)のことである。二人が記した「日本植物誌(Enum. PL. Japonicum、1875)」には、フラサバソウが明治初年(1868)に長崎で採取されたとの記録があり、ヨーロッパ原産のフラサバソウが、すでに日本に帰化していた証拠といえる。その後、フラサバソウの記録は途絶えるが、田代善太郎が1911年に長崎で採取した標本の中に、奥山がフラサバソウを見つけ出して、二人のフランス人の名前からフラサバソウと命名した。
  奥山氏の知識の深さには感心するが、命名センスはいかがなものであろうか。一般人にはその名の由来は想像もつかない。なおフラサバソウにはツタバイヌノフグリという別名がある。こちらの名は体を表している。

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フラサバソウ 2007.4.5 岐阜県可児市

びわ [は行]

  バラ科のビワは、日本に自生していた可能性もあるが、栽培される種は奈良時代に中国から渡来した。現在、山野に見られるものは渡来ものが野生化したものだろう。漢字では「枇杷」と書き、漢名がそのまま使われている。その名の由来は楽器の「琵琶」に葉の形が似ているからと、北宋時代の本草書「本草衍義」に記載がある*。楽器の琵琶も奈良時代に渡来したという。ちなみに湖の琵琶湖もその形が楽器の琵琶に似ているからという。だが琵琶湖を一望できる山などありはしない。測量地図が描かれた江戸時代の命名らしい。
  さて、枇杷は、実が食用に、葉は生薬となる有用植物である。実の形も葉の形も特徴的であり、似ている故にビワの名をいただいた植物がある。葉が似ているものとしては、クスノキ科のハマビワ、アワブキ科のヤマビワ、イワタバコ科のミズビワソウ、ヤマビワソウがある。実が似ているとされるのはクワ科のイヌビワとその近縁種が多数あるが、これらはイチジクの仲間でその実はむしろイチジクに似ている。

<「びわ」の名をいただいた植物>
バラ科:ビワ/クワ科:イヌビワ(ホソバムクイヌビワ、アカメイヌビワ、トキワイヌビワ、ホソバイヌビワ、ケイヌビワ、ムクイヌビワ、オオバイヌビワ、ギランイヌビワ、ハマイヌビワ)/クスノキ科:ハマビワ/アワブキ科:ヤマビワ/イワタバコ科:ミズビワソウ、ヤマビワソウ(キレバヤマビワソウ、タマザキヤマビワソウ)

*「植物和名の語源」、深津正、八坂書房.

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イヌビワ 2011.10.29 堺市

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