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るり [ら行]

 瑠璃(るり)色は、蝶の好きな人ならルリタテハ、鳥好きならルリビタキ、絵画ならフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」のターバンの色といえば分かってもらえるだろうか。フェルメールはこの色を出すために高価な宝石のラピスラズリを砕いて顔料として用いた。瑠璃とはラピスラズリのことであり、仏教の七宝のひとつ、瑠璃色は高貴な色とされる。植物にも瑠璃を名に持つものがいくつかあり、最大のグループはムラサキ科ルリソウの仲間で瑠璃色の花を咲かせる。濃い青色系の花色を有する植物は日本には少ないので瑠璃を当てたくなる気持ちはわかる。他にも青い花を持つものとして、ゴマノハグサ科(APGⅢではオオバコ科)のルリトラノオの仲間、シソ科のルリハッカ、サクラソウ科のルリハコベがある。花以外に瑠璃色の部分に由来するものとしてはアカネ科ルリミノキの仲間があり、光沢のあるその実はまさに宝石の瑠璃のようである。ヒナノシャクジョウ科のルリシャクジョウは葉緑素を持たない腐生植物で全身に瑠璃色を帯びていて神秘的である。最後はルリデライヌワラビだが、これはどこにも瑠璃色はなく、発見地の兵庫県佐用町の瑠璃寺にちなんだものである。
<瑠璃を名に持つ植物>
ルリデライヌワラビ、アカバナルリハコベ(帰化)、ルリハコベ、ケシンテンルリミノキ、タイワンルリミノキ、タシロルリミノキ、ケハダルリミノキ、ルリミノキ、サツマルリミノキ、オオバルリミノキ、マルバルリミノキ、サワルリソウ、オニルリソウ、タイワンルリソウ、ウスバルリソウ、シロバナウスバルリソウ、オオルリソウ、エゾルリムラサキ、ナンバンルリソウ、エゾルリソウ、ヤマルリソウ、シロバナヤマルリソウ、トゲヤマルリソウ、ルリソウ、シロバナルリソウ、エチゴルリソウ、ハイルリソウ、ケルリソウ、ルリハッカ、エゾルリトラノオ、ヤマルリトラノオ、ルリトラノオ、シロバナルリトラノオ、ルリシャクジョウ
ルリミノキ20181117槇尾山.jpg
ルリミノキ 2018.11.17 大阪府和泉市槇尾山

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れんげ [ら行]

 「れんげ」は「蓮華」、つまりハスの花のこと。如来様や菩薩様の仏像は、ハスの花をかたどった「蓮華座(れんげざ)」に乗っている。一方、中華料理で使うスプーンを「れんげ」と呼ぶが、正確には「ちりれんげ(散り蓮華)」という。つまり、花から離れた一枚の花びらのこと。れんげが名に付く植物には、蓮華座タイプと散り蓮華タイプがあるようだ。
 オオヤマレンゲ、レンゲショウマは花が、ベンケイソウ科のイワレンゲ、ツメレンゲの仲間は葉が蓮華座タイプ、同じベンケイソウ科でもヒメレンゲは葉が、レンゲツツジの仲間も葉が散り蓮華タイプだ。キレンゲショウマ、コダチキレンゲショウマはレンゲショウマに似ているところからという。レンゲショウマにも、ハスにもあまり似ていないがあえて言えば花が蓮華座タイプ。例外はレンゲイワヤナギ、高山帯の岩礫地に生育するこの植物の名の由来は白馬岳の別名の蓮華山である。謎はレンゲソウだ。この花、古くはゲンゲと呼ばれ、今でも標準和名はゲンゲなのだが、ハチミツの影響かレンゲのほうが馴染みがよい。元々の名のゲンゲは、平安貴族が履いた沓(くつ)のことで、一つ一つの花の形が似ている。レンゲの方はと言えば、花がハスに似ているからと解説されることが多いが、個々の花が散り蓮華なのか、花が集まった花序が蓮華座なのかよくわからない。ゲンゲの音韻がレンゲとにているのが原因のような気もする。

<れんげが名に付く植物>
レンゲイワヤナギ、オオヤマレンゲ、レンゲショウマ、チャボツメレンゲ、イワレンゲ、コモチレンゲ、ツメレンゲ、アオノイワレンゲ、ヒメレンゲ、キレンゲショウマ、コダチキレンゲショウマ、レンゲツツジ、キレンゲツツジ、ウラジロレンゲツツジ、レンゲソウ(ゲンゲ)

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レンゲツツジ 2014.5.30古牧温泉(植栽)


れんり [ら行]

 京都の貴船神社に、杉と楓が合着した『連理の杉』なる御神木がある。「連理」の字義は、(別々の樹木の)木目が合わさるという意味だが、転じて仲睦まじい夫婦のたとえとして使われている。縁結びのパワースポットとして知られる貴船神社に相応しい御神木というわけである。同じく夫婦仲が良いという意味で使われる言葉に「比翼」がある。一つの眼と一つの翼しか持たない伝説上の鳥である「比翼の鳥」は、雄と雌が力を合わせなければ飛ぶことができないことから生まれた意味である。この二つの言葉は合わせて「比翼連理」という四文字熟語として使われることも多いが、その由来は、白居易の長恨歌の次の一節で、玄宗皇帝が最愛の楊貴妃に語る科白である。
   在天 願作 比翼鳥 (天にあっては願わくは比翼の鳥となり)
   在地 願為 連理枝 (地にあっては願わくは連理の枝とならん)
 さて、連理を名に持つ植物にレンリソウ(連理草)がある。図鑑には「対生する葉を仲の良い夫婦にたとえ」というような解説が見られるが、対となる葉の大きさが違うなら、夫婦茶碗のようにたとえようがある。しかし、同じ大きさの葉が対になっているこの草には不自然である。むしろ対生する細長い葉は鳥の翼のように見え、比翼の鳥にたとえる方が自然に思える。元々は、比翼連理草であったものが言いやすい連理草になったか、あるいは、おっちょこちょいの学者が比翼と連理を取り違えたのか、想像が膨らんでしまう。ただし、ヒヨクソウ(比翼草)の名は、別の草に使われており、対生する葉の葉腋から2本の花序を出すこの草は、雌雄2羽の比翼の鳥が合体し、2本の首をそろえて飛ぶ姿に見える。

<連理の付く植物> レンリソウ、エゾノレンリソウ、キバナノレンリソウ

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レンリソウ 2014.5.17 京都府木津川市

らしょうもん [ら行]

 羅生門(羅城門)は、平城京と平安京の南端に設けられた都の正門となる楼閣である。特定の建造物の名称が植物名に付くのはとてもめずらく、羅生門の他にはナデシコ科のセンノウ類の由来とされる仙翁寺(せんおうじ)ぐらいしか思いつかない。羅生門が名前に付く植物はラショウモンカズラ1種のみであるが、この羅生門が、平城京のものか平安京のものかというと、平安京ものと決まっている。なぜかと言えば、それは平安時代の中頃、羅生門に出没する茨木童子という鬼を、渡辺綱が退治するという説話がラショウモンカズラの名の由来となっているからである。説話の中では羅生門で渡辺綱が茨木童子の腕を切り落とすのだが、ラショウモンカズラの花がその腕に似ているという。まるで落語の考え落ちのような命名由来である。

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ラショウモンカズラ 2013.5.3 東京都八王子市


れだま [ら行]

  クサレダマというサクラソウ科の多年草がある。「腐れ玉」ではなく「草れだま」である。この「れだま」は、マメ科の低木のレダマSpartium junceumのことである。レダマはエニシダCytisus scopariusの近縁の植物であり、エニシダ類に共通する特徴(箒のように叢生する枝に黄色い花を付ける)を持っている。地中海地方の原産で、日本には江戸時代の初めに渡来し、スペイン語やポルトガル語でのエニシダ類の呼び名「Retama」が、「レダマ」として定着した。漢字で連玉あるいは麗玉と書く向きもあるが、全くの当て字である。
  レダマのスペイン語名は「Retama de olor」であり、Retama には箒という意味もあるので「匂いの箒」という意味合いになる。英名は「Spanish broom」で、「スペインの箒」というわけだ。Broomは箒の意に加え、エニシダの仲間の英名ともなっている。
 エニシダ類の英名としては、ラテン語由来の「genista」も使われる。これはスペイン語の「hienista」を経て日本に伝わり、和名エニシダの語源となった。
なお、ややこしい話だが、Genistaはヒトツバエニシダ(Genista)属のラテン名となっており、エニシダは別の属であるエニシダ(Cytisus)属に属している。また、レダマはレダマ(Spartium)属に属しており、RetamaはRetama属という別の属のラテン名となっている。
  話しを戻してクサレダマだが、レダマに似ている草なのでクサレダマとなったといわれるが、花の色が黄色いところしか似ていない。レダマ渡来以前の名はなんであったのだろうか。
[レダマ(外来種)、クサレダマ、ヒロハクサレダマ]

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クサレダマ 1997.8.12. 宮城県釜房湖畔

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