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むし [ま行]

 昆虫の名前の着いた植物は多々あり、マツムシソウ、スズムシソウ、トンボソウ、ジガバチソウなどは、分かりやすいが、どんな虫なのか分からないのがいくつかある。まずはムシクサ(虫草)、よく虫こぶが出来ているのでこの名があるのだが、その虫の正体はムシクサコバンゾウムシである。次はムシカリ(別名オオカメノキ)、葉がよく虫に食われるので「虫食われ」が転じたとされ、その虫はというとブチヒゲケブカハムシなどハムシ類。虫にやられてばかりでもなく、虫をやっつけるのがムシトリスミレにムシトリナデシコ、前者はコバエを葉の粘液で捉え吸収する食中植物、後者は茎の上部に帯状の粘着部分があり、〇〇ホイホイのように密泥棒のアリを捕まえる。どうしても虫の種類が解らないものが2つあって、それはカラムシとタムシバ。カラムシは「唐虫」とばかり思っていたらなんと「茎蒸」、茎を蒸して繊維を採って、苧麻とかラミーと呼ばれる織物にするという。タムシバは「田虫葉」と思っていたらこれは「噛む柴」、噛み癖のある柴犬ではなく、甘みがあり香りのよいこの木の小枝を噛んで清涼剤としたそうだ。

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ムシクサ 2006.5.6 各務原市浄水公園
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むしろ [ま行]

 1種類の草花がカーペット状に地を這い地面を覆う光景は、それぞれに素敵なものである。そんな場面をつくるために人が手入れをしているのが庭園やゴルフ場であるが、天然でもカーペットを作る植物は少なからずあり、中には敷物に因んだ名前を持つものがある。キキョウ科のミゾカクシ(溝隠し)は別名をアゼムシロ(畔筵)といい田んぼの畔を薄紫色の花の筵で覆う。バラ科のキジムシロ(雉筵)は草原の黄色い筵。それを使うのは言うまでもなく野鳥のキジ。水面に浮かぶ筵はヒルムシロ科ヒルムシロ(蛭筵)。それを使うのはなんと吸血動物のヒル。筵はワラを編んだ質素な敷物だが、高級な敷物といえばイグサを編んだ茣蓙(ござ)で、蛇の寝床となるメシダ科のヘビノネゴザ(蛇の寝茣蓙)があり、さらに豪華な敷物といえば毛氈(もうせん)で、食虫植物のモウセンゴケ科モウセンゴケの仲間は、赤く色着き緋毛氈となる。

<敷物になる植物>
筵:アゼムシロ、キジムシロ、ツルキジムシロ、ナガバツルキジムシロ、ヒメツルキジムシロ、エチゴキジムシロ、エチゴツルキジムシロ、マルバハタケムシロ、ホソバヒルムシロ、コバノヒルムシロ、ヒルムシロ、フトヒルムシロ、エゾノヒルムシロ、アイノコヒルムシロ、オヒルムシロ.茣蓙:ヘビノネゴザ、ミヤマヘビノネゴザ、ウスバヘビノネゴザ、ヒロハヘビノネゴザ、キリシマヘビノネゴザ.毛氈:モウセンゴケ、コモウセンゴケ、サジバモウセンゴケ、ナガバノモウセンゴケ.

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アゼムシロ 2015.8.30 富田林市

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ところ [た行]

「ところ(野老)」とはヤマノイモ科のオニドコロあるいはヒメドコロのことであり、イモ状の塊茎は古くから食用とされ、古事記には登許呂豆良(ところづら)という表記で登場する。野老という漢字表記は長い鬚のような根を持つ塊茎を翁に見立てたとも、海のエビ(海老)対して野のエビと呼んだともいい、いずれにしても後の当て字である。ではそもそも「ところ」とはなんなのだろう。それには諸説あり、その形からトコリ(凝)、食べ方からトクル(溶ける)を語源とするものがあれば、インドネシア語のtongkol(不定形の塊の意)とするものもある(深津1995)。オニドコロの塊茎を食べる習慣は、現在ではわずかに青森県の一部(南部地方)に残っており、アクが強く苦いので木灰をいれた湯で長時間ゆでて食べるそうである。塊説に軍配をあげたい。「ところ」と同じような古くからの食用植物に「いも」、現在のヤマノイモがあり、万葉集に宇毛(うも)という表記で登場する。こちらの語源説には、ウズム(埋)やウマシ(旨)がある(吉田2001)。現代人にとってみれば、オニドコロもヤマノイモも食用となる部分は、どちらも芋だが、古代人にとっては、塊で食べられるものが「ところ」、土に埋もれていて食べられるものが「いも」であったのだろうと想像する。
ところの名を持つ植物は、ヤマノイモ科の7種の他、ユリ科にアマドコロの仲間3種、ナス科にハシリドコロがある。アマドコロは根茎がオニドコロに似ており、食用とする若芽には甘みがある。ハシリドコロも根茎がオニドコロに似ているが有毒植物で食べると錯乱して走り回るという。

<ところを名に持つ植物>
ヤマノイモ科:オニドコロ、ヒメドコロ、シマウチワドコロ、キクバドコロ、カエデドコロ、アケビドコロ、ウチワドコロ、イズドコロ、タチドコロ、ツクシタチドコロ.ユリ科」ヤマアマドコロ、アマドコロ、オオアマドコロ.ナス科:ハシリドコロ.

*深津正、「植物和名語源新考」、八坂書房、1995
*吉田金彦、「語源辞典植物編」、東京堂出版、2001

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ハシリドコロ 2020.4.11 白髭岳(奈良県)
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