SSブログ

ひれ [は行]

 鰭といえば魚のもので、漢字も魚へんだ。植物に鰭状の部位があれば、解剖学的には翼(よく)と呼ばれる。しかし、ヨクが名前に付いた植物はなく、ヒレが付いたものなら若干存在する。ヒレアザミやヒレハリソウは、茎に翼を持っており、茎の強度を増す働きをしているそうである。ヒレフリカラマツはというと、どこにも翼はない。佐賀県の岩場に生育するこの花のヒレは「領巾」で、飛鳥、奈良時代の女性が装身具として、両肩に掛けて左右へ垂らした長い帯状の布である。愛しい男との別れの時、女はこの領巾を振る。
 今から1500年ほど前のこと、松浦(現:唐津市厳木町)の豪族の娘佐用姫(さよひめ)は、新羅に出征するためこの地を訪れた大伴狭手彦と恋仲となった。出征の別れの日、佐用姫は鏡山(別名:領巾振山ひれふりやま)の頂上から領巾を振り、船を見送っていたが、別れに耐えられなくなり船を呼子の加部島まで追って行き、七日七晩泣きはらした末に石になってしまったという。万葉集には、この伝説に因んで詠まれた山上憶良の和歌が収録されている。

 行く船を 振り留めかね 如何ばかり 恋しかりけむ 松浦佐用姫

<ひれつきの植物>
ヒレフリカラマツ、ヒレアザミ、マルバヒレアザミ、ヒレハリソウ

ヒレハリソウ20160527安曇野.JPG
ヒレハリソウ 2016.5.27 長野県安曇野市

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。