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ぼくち(ほくち) [は行]

 山好きの方々は、オヤマボクチを「お山僕ん家」と呼ぶそうだが、もちろん「ぼくち」は「僕ん家」ではなく、火口(ほくち)の意である。火口は、火打石で火をおこすときに、火花を受けて最初の火種をつくる燃焼材である。火口には、引火性が高く、火もちがよい素材として、サルノコシカケ類のキノコの粉末や、麻などの繊維、ガマの穂など、地域や時代に応じて様々な素材が使用された。オヤマボクチの仲間の葉の裏には綿毛があり火口として使われたという。ホクチアザミも同様である。帰化植物にホクチガヤがあるが、これは別名をルビーガヤといい、赤い穗を付ける。火口として利用したのではなく、火種のように見えるから付いた名である。

<ぼくちを名に持つ植物>
キク科:ハバヤマボクチ、キクバヤマボクチ、ヤマボクチ、オヤマボクチ、オニヤマボクチ(以上ヤマボクチ属)、ホクチアザミ(トウヒレン属).イネ科:ホクチガヤ(帰化、別名ルビーガヤ)

ハバヤマボクチ20130914岩湧山.jpg
ハバヤマボクチ 2013.9.14 岩湧山


ていしょう [た行]

 テイショウソウの「ていしょう」は「禎祥」。禎は「めでたいしるし」、祥も「めでたいこと、きざし」の意味を持っており、禎祥は吉兆を意味する。目にすることがない熟語だが、司馬遷が記した中国の歴史書である『史記』に用例を見ることができる。史記は130巻に及ぶ大作だが、まずは巻50楚元王世家にある記述、
太史公曰、國之將興、必有禎祥 【太史公いわく、国のまさに興らんとするや、必ず禎祥あり】
 古代中国では、国を興し王となるものは、天から選ばれた者なので、必ずその前兆が現れると考えられた。この前兆はどのように現れるのか。それは占いに現れるのである。そして古代日本でも古代中国でも亀の甲羅を火にあぶり、ひびの入り方を読む亀卜が行われた。史記には亀卜について記述した巻もあり、その巻128 亀策列傳にも、次のように禎祥が登場する。
自三代之興各據禎祥・・・・断以蓍亀不易之道也 【(夏・殷・周)三代より、それぞれの興りは、禎祥がよりどころとなった。・・・・蓍亀(占い)を以て判断するのは変わることのない道である。】
 テイショウソウの葉は亀のお腹の側の甲羅(腹甲)に形が似ている。この葉には濃淡模様があるが、この模様が亀卜の亀裂、しかも吉兆を表しているということか。

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テイショウソウ 2014.9.27 岩湧山

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