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まつむし [ま行]

 マツムシソウ(松虫草)の名の由来に、松虫が鳴く頃に花が咲くからと説く書があるが、それでは秋の花はみんなマツムシソウになってしまう。この松虫は歌舞伎で巡礼の登場シーンなどに鳴らされる鉦のことである。松虫鉦は床に置いて叩いて使う伏鉦の一種で、その音が松虫の声に似ていることからこの名がついた。仏壇のお鈴(りん)を伏せた形、特に表面に槌目模様がある大徳寺りんなどは、花が終わったマツムシソウの半球状の実と似ている。ところが、実際の松虫鉦、少なくとも現在使われている松虫鉦は半球状ではなく平らなものである。昔は半球状のものがあったのだろうか。松虫の名を持つ植物はマツムシソウ科のマツムシソウとその変種のエゾマツムシソウ、タカネマツムシソウの3種である。蛇足となるが、現在の松虫と鈴虫の名称は入れ替わったもので、昔は逆であったそうだ。そういわれると松虫鉦の音色は鈴虫の声に似ているようにも思えてくる。鈴虫の名を持つ植物にはキツネノマゴ科のスズムシバナとラン科のスズムシソウの仲間があり、スズムシソウの花は鈴虫に似ている。スズムシバナはといえば鈴虫が鳴く頃に花が・・・。

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マツムシソウ 2021.9.25 和歌山県生石高原

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松虫(石川県立音楽堂にて)

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