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おうれん [あ行]

 おうれん(黄連)は、中国最古の薬物書である神農本草経にも記載される由緒正しき生薬であり、黄連解毒湯といえば黄檗(おうばく)などの他の生薬と調合された血の道の薬である。基原植物はシナオウレンCoptis chinensisであるが、日本では自生するオウレン属8種のうちオウレン(キクバオウレン)C. japonicaと変種のセリバオウレンC. japonica ver. majorが基原植物として利用されている。神農本草経の成立は後漢の頃とされ、著者・編者は不明である。本書には薬となる365種の植物・動物・鉱物が記載され、黄連のみならず現在でも生薬として使用されているものが数多く含まれている。また、薬は上薬・中薬・下薬に分類されており、上薬は無毒で長期間服用でき健康を作る不老長寿の薬、中薬は病気を予防し体を強くする薬だが毒にもなるもの、下薬は病気を治すためのもので毒があるものとしている。現在の薬事法における副作用リスクに応じた薬品の第3類、2類、1類の分類に似通った考えが、2000年ほど前の中国に既にあったことは驚きである。
参考文献:森由雄、神農本草経解説、源草社、2011.

<オウレンを名に持つ植物>
オウレン(キクバオウレン)、セリバオウレン、コセリバオウレン(ホソバオウレン)、ウスギオウレン、バイカオウレン(ゴカヨウオウレン)、オオゴカヨウオウレン、ミツバノバイカオウレン(コシジオウレン)

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セリバオウレン 2022.3.5 河内長野市横谷

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ゆきわり [や行]

 サクラソウ科のユキワリソウやユキワリコザクラ、キンポウゲ科のユキワリイチゲは、残雪の残る早春に花を開くが、雪を割って出てくるような状況は、これらについては見たことがない。別名「ユキワリ」というフクジュソウなら雪の中に咲く光景を見たことがある(「ふく」参照)。雪の多い地方にはユキワリソウ、ユキワリバナと呼ばれる野草がいくつかあり、日本植物方言集成(八坂書房2001)には、イチリンソウ、ハシリドコロ、シュンラン、ショウジョウバカマ、ミスミソウ類に、ユキワリソウあるいはユキワリバナという地方名があることが記載されている。北陸地方でユキワリソウといえばオオミスミソウを指すようであり、新潟県の草花となっている「雪割草」はユキワリソウと区別するため漢字表記となっている。園芸界で雪割草といえばミスミソウ類のことで園芸品種も多い。
<本名雪割と別名雪割>
本名:ユキワリイチゲ、ユキワリソウ、ユキワリコザクラ.別名:タカネコメススキ(ユキワリガヤ)、ユキノシタ(ユキワリソウ)、フクジュソウ(ユキワリ)、イチリンソウ(ユキワリソウ)、ハシリドコロ(ユキワリソウ)、シュンラン(ユキワリバナ)、ショウジョウバカマ(ユキワリソウ、ユキワリバナ)、ミスミソウ・オオミスミソウ・スハマソウ・ケスハマソウ(ユキワリソウ)

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ユキワリイチゲ 2022.3.13 河内長野市横谷
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かさ [か行]

 傘と笠の違いはお解りだろうか。傘は頭上にかざすもので「さしがさ」ともいい、笠は頭にかぶるもので「かぶりがさ」ともいう。「米国の核のカサに守られていることをいいことに経済力をカサにきて・・・」とくればどっちがどっちか。
 植物の場合はというと判然としないものもあるが、まずは明快なところでカサスゲ、編笠の材料となる菅なので笠。ずばり編笠という名をもつものが、トウダイグサ科のアミガサギリで大きな葉の赤い葉脈が網目模様だから。同じトウダイグサ科だがエノキグサの別名をアミガサソウというのは花の下の苞葉が編笠の形に似ているから。ハナガサノキは花笠の木で赤い集合果を琉球舞踊の花笠にみたてたもの、山形の花笠まつりのものではない。
 一方、明快な傘といえば、地面から伸びた葉の形が柄の付いた傘のようなモミジガサ。若い開き切らない葉が破れた番傘のようで目玉を着ければ妖怪傘化けとなりそうなヤブレガサ。ヤブレガサを大型にしたようなものがタイミンガサで大明は中国の明国の意とされるがなぜかは不明。高さ1.5mともなるオオカサモチは太い茎のてっぺんに散形花序を広げた傘を持つ。湿地に咲くヒキノカサは長い花茎に付く花を蛙の傘にみたてたものである。
 さてここからが悩ましい。イワガサは岩場に生育するシモツケの仲間でコデマリやイブキシモツケのような半球上の散房花序を着け一見笠のようだが、裏から見ると放射状に骨が広がった傘そっくりである。ウメガサソウは梅に似た花を長い花茎の先に下向きに笠のように咲き始めるが、次第に横向きとなり、風にあおられておちょこになった傘のようである。最後はキヌガサソウ、現在は衣笠と表記されるが、これは奈良・平安の時代に高貴な方に従者がかざしたもので天蓋あるいは絹傘といい、現在の傘の原型とされるものである。
<どっちがどっち笠と傘>
【笠】アミガサギリ、キダチアミガサソウ、キ-ルアミガサギリ、アミガサソウ(別名:エノキグサ)、カサスゲ、アカンカサスゲ、アキカサスゲ、キンキカサスゲ、フクイカサスゲ、オオカサスゲ、カラフトカサスゲ、ハナガサノキ、ハハジマハナガサノキ、ムニンハナガサノキ。【傘】タイミンガサ、ニシノヤマタイミンガサ、ヤマタイミンガサオオモミジガサ、テバコモミジガサ、モミジガサ、タンバヤブレガサ、ヤブレガサ、ヤブレガサウラボシ、ヤブレガサモドキ、ヒキノカサ、オオカサモチ。【どっちでもいい】イヨノミツバイワガサ、イワガサ、コゴメイワガサ、ミツバイワガサ、ウメガサソウ、オオウメガサソウ、キヌガサソウ

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ヤブレガサ 2020.4.19 両佛山

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