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どく [た行]

 人間や家畜に害を与える有毒植物は数多いが、「どく(毒)」を付けて呼ばれる植物はほんのわずかである。その中で人の誤食による中毒が問題とされるものにドクゼリ、ドクニンジン、ドクウツギがある。ドクゼリは食用のセリと葉の形がそっくりのため誤食事故が後を絶たない。ドクニンジンはヨーロッパ原産の帰化植物で北海道のほか本州の数県で分布が確認されている。ドクニンジンの毒は、古代ギリシャの哲人ソクラテスの死刑に用いられた毒として知られる。山菜のシャクと間違えての誤食事故が発生している。ドクウツギの実は甘くておいしいらしく子供の誤食事故が多い。これらの植物は毒と呼ぶことで誤食への警告を発しているといえる。ドクムギは聖書にも出てくる有害植物で日本に帰化している。ドクムギの場合は人が食べることはないが、ドクムギ内部の共生細菌が生成する毒物により家畜が中毒を起こす。
 一方、ドクダミ、ハエドクソウは、有用植物で(使いようによっては毒にもなるだろうが・・・)、ドクダミは解毒の民間薬として知られる薬草で、その名は「毒矯み」(毒を矯正する)から来ているという説がある。ハエドクソウは「蛆殺し」とも言われその殺虫効果から「蝿取り紙」の材料ともなった。ツルドクダミは江戸時代に薬草として中国から持ち込まれたもので今では関東以西に帰化している。タデ科の植物だがドクダミ科のドクダミと姿が似ていることからこの名が付いた。

※「どく」の付く植物
 ツルドクダミ(帰化)、ドクダミ、ドクウツギ、ドクゼリ、ドクニンジン(帰化)、ハエドクソウ、ナガハハエドクソウ、
 ドクムギ(帰化)、ノゲナシドクムギ(帰化)

ドクダミ130608和歌山県橋本市.jpg
ドクダミ 2013.6.8 和歌山県橋本市

たびらこ [た行]

  標準和名としてタビラコという植物はないが、コオニタビラコ(キク科)とキュウリグサ(ムラサキ科)は、かつてはともにタビラコと呼ばれていた。しかし、同じ名前というわけにはいかないので、別の名で呼び分けられることになった。キク科にはこの他に~タビラコというものが4種あり、タビラコに対し大型のオニタビラコの名が生まれ、キュウリグサとの区別の関係からコオニタビラコという逆戻りの呼び名が生まれたようである。一方、キュウリグサはタビラコと縁が切れたが、同属のミズタビラコ、コシジタビラコにはその名が残っている。
  さて、この「たびらこ」だが、多くの図鑑では、「田平子」と表記して、田んぼや畔に平べったく生えているからと説明されている。コオニタビラコもキュウリグサも冬越しのロゼット葉を見ると確かに平たく地面に張り付いている。しかし、基本的にロゼットは平たいものだろう。さらに「子」は何かといえば、「どじょっこ、ふなっこ」の秋田訛りの「こ」であるという。秋田県出身の筆者としてはどうも納得がいかない。悩みながら両方のロゼットの写真を眺めていたら、葉のひとつひとつが、小さな魚に似ていることに気が付いた。そうだ、これはタビラの子だ。淡水魚タナゴの仲間にタビラとよばれる種群がある。タビラ(田平)は、その名の通り、田んぼ周辺に生息する平べったい魚で、成魚でも10cmほどの小魚である。「どじょっこ、ふなっこ、たびらっこ」、これなら秋田県民も納得である。

※「たびらこ」という植物
キク科:コオニタビラコ(別名:タビラコ)、ヤブタビラコ、オニヤブタビラコ、ヒメキクタビラコ、オニタビラコ.
ムラサキ科:キュウリグサ(別名:タビラコ)、ミズタビラコ、コシジタビラコ.

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コオニタビラコ 2003.4.6 神奈川県八菅山

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