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かかやん [か行]

 日本自生の植物なのに外国の地名が付く植物がある。検索する方法がないので見つけたらということで、ナンキンナナカマドの南京市、ボロジノニシキソウのボロジノ(Бородино)村は既に取り上げた。今度はカカヤンバラのカガヤン(Cagayan)州である。カガヤン州はフィリピンはルソン島の北部にある。そこに八丈島の船長儀平なるものが漂着し、バラの種を持ち帰り、その種が赭鞭会(しゃべんかい)という本草学研究会の会員である旗本馬場大助の手に渡り、花咲き実を着け広がったというわけである。馬場大助は絵画に堪能で渡来植物を庭で育て図譜を出版しており、そのひとつ「遠西舶上画譜」(1855)に次のくだりがある。文政十丁亥年は1827年である。
『文政十丁亥年八丈嶋ノ船長儀平「カゝヤン」ト云國ヘ漂流シテ携帰ル種ヲ贈レルヲ下種シテ初テ生ス』
 その後、石垣島に自生が発見されヤエヤマノイバラという名前が付けられるが、すでにバラ愛好家に定着した名前が代わることはなかったということのようである。

カカヤンバラ20220703浜寺公園_植栽SS.jpg
カカヤンバラ 2022.7.3 堺市浜寺公園(植栽)

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じがばち [さ行]

「ジガバチソウの名の由来は花の形がジガバチに似ているから。それじゃあジガバチの名の由来はというと、この蜂が獲物を土の中に埋めるときの翅音(はおと)が『じがじが』と聞こえるからという。なるほど、さて漢字表記は『似我蜂』。え、なぜ『似我』?」
 ジガバチは狩バチであり、幼虫の食料となる獲物(青虫)を捕らえ、毒で麻痺させ、卵を産み付けて土中の巣穴(幼虫室)に埋める。そして土中で孵化し、獲物を食べつくした幼虫は蛹となり、羽化して土中から現れる。このような寄生バチの生態が解明される前の大昔、埋めた青虫が蜂になるのは、埋める際に「似我似我(我に似よ、我に似よ)」と呪文を唱えるからとされた。
 儒教の経典の一つである「詩経」には、『ジガバチが青虫を呪文により蜂にするように、我が子を教え諭し、親に似させなさい』という意の記述があり、孔子の教えにより弟子たちが師である孔子に似ていくことと解釈され、君主による統治には民衆の教化が大切であることの例えともなっていく。さらに仏教では、理屈は分からずとも一心にお経を唱えることによって仏に近づけるという例えとなり、「似我の功徳」という格言を生むに至る。
 植物の名前のはずが、昆虫の名前の覚書となってしまった。

参考文献:井上治彦(2017)ジガバチの系譜、伊丹市昆虫館研究報告、第5号、pp.13-18.

ジガバチソウ20220609観音峰山2.jpg
ジガバチソウ 2022.6.9 奈良県天川村観音峰山

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