SSブログ

ふし [は行]

 江戸中頃の百科事典といえる「和漢三才図会」(寺島良安、1712)の「塩(鹽)麩子」という見出し語に、「ふし」と仮名がふられ、俗に奴留天(ぬるて)と云う、とある。現在のヌルデである。ヌルデという樹木に、ヌルデシロアブラムシが寄生し、ヌルデミミフシという虫こぶ(虫えい)を作る。これを「五倍子」といい、「ふし」と読む。ヌルデは「ふし」あるいは「ふしのき」と呼ばれた。五倍子には多量のタンニンが含まれており、染料やお歯黒の原料として利用された。「ふし」の代用品として使用されたのがキブシ(木附子)や、ヤシャブシ(矢車附子/夜叉五倍子)の果実である。「ふし」には五倍子、附子、膚子など多数の漢字が充てられているが、附子は「ぶし」と読めばトリカブトの毒を意味する(「ぶし」の項参照)。なお「ふし」という音を含む植物名の多くは「節」を意味しており、五倍子を意味するのは、ヌルデとキブシとヤシャブシの仲間のみである。

参考文献
・薄葉重、虫こぶハンドブック、文一総合出版、2003.
・山崎青樹、草木染染料植物図鑑1、美術出版社、2012.

<ふし(五倍子)を名に持つ植物>
ヌルデの仲間:フシノキ(ヌルデ)、タイワンフシノキ.キブシの仲間:キブシ、マルバキブシ、ナンバンキブシ、ケキブシ、ヒメキブシ.ヤシャブシの仲間:ヤシャブシ、ミヤマヤシャブシ、アイノコヤシャブシ、タルミヤシャブシ、ヒメヤシャブシ、オオバヤシャブシ.

キブシ20220403雪彦山S.jpg
キブシ 2022.4.3 雪彦山
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

ばいもいちい ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。