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ところ [た行]

「ところ(野老)」とはヤマノイモ科のオニドコロあるいはヒメドコロのことであり、イモ状の塊茎は古くから食用とされ、古事記には登許呂豆良(ところづら)という表記で登場する。野老という漢字表記は長い鬚のような根を持つ塊茎を翁に見立てたとも、海のエビ(海老)対して野のエビと呼んだともいい、いずれにしても後の当て字である。ではそもそも「ところ」とはなんなのだろう。それには諸説あり、その形からトコリ(凝)、食べ方からトクル(溶ける)を語源とするものがあれば、インドネシア語のtongkol(不定形の塊の意)とするものもある(深津1995)。オニドコロの塊茎を食べる習慣は、現在ではわずかに青森県の一部(南部地方)に残っており、アクが強く苦いので木灰をいれた湯で長時間ゆでて食べるそうである。塊説に軍配をあげたい。「ところ」と同じような古くからの食用植物に「いも」、現在のヤマノイモがあり、万葉集に宇毛(うも)という表記で登場する。こちらの語源説には、ウズム(埋)やウマシ(旨)がある(吉田2001)。現代人にとってみれば、オニドコロもヤマノイモも食用となる部分は、どちらも芋だが、古代人にとっては、塊で食べられるものが「ところ」、土に埋もれていて食べられるものが「いも」であったのだろうと想像する。
ところの名を持つ植物は、ヤマノイモ科の7種の他、ユリ科にアマドコロの仲間3種、ナス科にハシリドコロがある。アマドコロは根茎がオニドコロに似ており、食用とする若芽には甘みがある。ハシリドコロも根茎がオニドコロに似ているが有毒植物で食べると錯乱して走り回るという。

<ところを名に持つ植物>
ヤマノイモ科:オニドコロ、ヒメドコロ、シマウチワドコロ、キクバドコロ、カエデドコロ、アケビドコロ、ウチワドコロ、イズドコロ、タチドコロ、ツクシタチドコロ.ユリ科」ヤマアマドコロ、アマドコロ、オオアマドコロ.ナス科:ハシリドコロ.

*深津正、「植物和名語源新考」、八坂書房、1995
*吉田金彦、「語源辞典植物編」、東京堂出版、2001

ハシリドコロ20200411白髭岳.JPG
ハシリドコロ 2020.4.11 白髭岳(奈良県)
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