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せんだん [さ行]

 センダン科の落葉高木であるセンダンの漢字表記は、どの辞書をみても「栴檀」とある。そして諺の「栴檀は双葉より芳し」の栴檀はビャクダン科の常緑樹のビャクダン(白檀)であると解説がつく。実際にセンダンには香木にするほどの香りはなく、栴檀は日本でいう白檀の中国名であるそうだ。このような植物名の混同がなぜ生じたのであろうか。
 諺の起源は平家物語の巻第一殿下乗合に登場する同一の文にあり、世に広まり諺となっていくのは鎌倉時代以降のことである。一方センダンは古名を「アフチ」といい、それがセンダンと変わるのがいつかというと、江戸時代の「東雅」(新井白石、1717)に、アフチについて「俗にセンダンといふ是也」という記述がある。そしてこのセンダンについては千個の団子の「千団」とする説が有力である。センダンは秋に白い丸い実を着ける。冬になって葉を落とし実だけとなった姿は、老木となればまさに千個の団子がついているようである。「アフチ」が「千団」となり、「栴檀」と混同されるに至るには、滋賀県大津市にある三井寺の千団子祭りが関係していると言われる。三井寺は平安時代に創建された古刹であり、西国三十三所巡りの14番札所として、そして近江八景の三井晩鐘として有名なお寺である。千団子祭りは鬼子母神の千人の子供に千個の団子を備えて供養するもので600年の歴史を持つ。この祭りは千団講とも呼ばれ、さらに仏典との関係が深い栴檀の文字をあてて栴檀講と表記したことが混同の原因とされている。
 「せんだん」が名前に付く植物はセンダンのほかは、センダンと葉の形が似ていることから名がついたハマセンダン(ミカン科)とセンダングサ(キク科センダングサ属)があり、センダングサ属(Bidens)にはアメリカセンダングサなどの外来種がいくつかある。セリバノセンダングサ(キク科)はセンダングサの仲間ではなく、葉もセンダンに似ていないが、種の形がセンダングサ属とそっくりである。ちなみにセリバノセンダングサの学名はGlossocardia bidensであり、bidensは2本の歯という意味である。

補)平家物語の「栴檀は双葉より芳し」の由来は、仏典の観仏三昧教の「栴檀、伊蘭草(トウゴマ)中に生じ、まだ双葉にならぬうちは発香せず、ただ伊蘭の臭気のみあるも、栴檀の根芽漸々生長し、わずかに木にならんと欲し香気まさに盛んなり」からきたものである。原典の意味は少し違うようだ。・・・・満久崇麿著「仏典の植物」八坂書房1977より

<せんだんを名に持つ植物>
センダン、ハマセンダン、センダングサ(同属の外来種:コバノセンダングサ、アメリカセンダングサ、ホソバノセンダングサ、アワユキセンダングサ、シロバナセンダングサ、コセンダングサ)、セリバノセンダングサ

センダン20120126堺市.jpg
センダン 2012.1.26 堺市
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