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しゃしゃ [さ行]

 ツツジ科スノキ属の常緑低木のシャシャンボの「しゃしゃ」。国語辞典で引いても「しゃしゃりでる」ぐらいしか、「しゃしゃ」の文字は出てこない。『牧野植物図鑑』を見ると、シャシャンボは「ささんぼ(小小ん坊)」の意味で、実が小さく丸いからとある。なるほど「ささ」であれば、ささぐり(小栗)、さざなみ(小波)、ささめゆき(細雪)など、小さいという意味での用例はたくさんある。しかし、植物名に、小さいという意味で「ささ」が用いられている例は見当たらない。植物標準和名に出てくる「ささ」はすべて「笹」を意味しているようだ。
 さて、小さな丸い実をつける木はシャシャンボに限らない。シャシャンボはブルーベリーの仲間で実が食べられるから、特に実にちなんだ名前がついたのだろうか。江戸後期の百科事典のような資料、『物品識名』(岡林 清達・水谷 豊文、1809)を見ると「シャシャンボ、別名ワクラ」で見出しはあるが説明は全くない。同じく植物図鑑のような資料、『草木図説木部』(飯沼慾斎、1865未出版)には、「ワクラ」の見出しで解説があり、その中に“葉シヤシヤキニ似テ小”との記述がある。この「シヤシヤキ」はツバキ科ヒサカキ属の常緑低木のヒサカキであり、ヒサカキは、シャシャンボに葉の形状のみならず、白い鐘状の花を付け、小さな黒い実がたくさんなるという点でも似ている。
 岐阜県植物方言辞典(金古弘之、2010)によれば、岐阜県西濃地方にシャシャンボをワクラ、岐阜市にヒサカキをシャシャキという方言があることが記録されており、飯沼慾斎は岐阜県大垣市の出身なので符合する。さらに、日本植物方言集成(八坂書房編、2001)によると「シャシャキ」は、静岡、愛知、兵庫赤穂・加古、山口厚狭、岡山、徳島美馬、香川、愛媛、高知土佐、福岡粕屋でヒサカキの方言となっている。また、シャシャンボにはササボ(三重)の方言がある。さらにシャシャンボ、ヒサカキ、アセビ(ツツジ科アセビ属)の方言として、シャシャビ、シャシャブ、シャシャボといったシャシャ**系の方言が多数ある。
 これらの3種は花・葉・実の形状が似かよっている。小さな実が食べられるササブがシャシャンボとなり、類似しているヒサカキやアセビにもシャシャが使われることになったのではないだろうか。

ヒサカキ090403琵琶湖竹生島.JPG
ヒサカキ(シャシャキ) 2009.4.3 琵琶湖竹生島
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