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こうぼう [か行]

  環境庁の植物リスト1988には、「こうぼう」を名に持つ植物が、イネ科に8種、カヤツリグサ科に3種記載されている。
  イネ科の「こうぼう」は「香茅」と書いていい香りがするカヤの意味であり、乾燥させるとクマリン臭(桜餅の葉の香り)がする。⇒タカネコウボウ、イシヅチコウボウ、ミヤマコウボウ、オオミヤマコウボウ、コウボウ、エゾコウボウ、エゾヤマコウボウ、セイヨウコウボウ(外来種)
  カヤツリグサ科の「こうぼう」には、コウボウムギ、その北方タイプであるエゾノコウボウムギ、そして姿が似ているが小さめのコウボウシバがある。いずれも海浜植物で、砂浜に埋もれるように生きている。この「こうぼう」は、真言宗の開祖である弘法大師空海(774~835)の「弘法」であり、この点について異論を唱えるものはいないが、この植物と弘法大師がどうして結びつくかという点ではいろいろと説がある
  コウボウムギは雌雄異株なのだが、どちらの株も砂の中から一本の茎を立ち上げ花をつける。雄花は一本の筆のように見える。筆といえば弘法大師、三筆の一人とされる能書家で、「弘法も筆の誤り」、「弘法筆を選ばず」ということわざは説明するまでもないだろう。一方、雌花は麦の穂に似ている。これらを合わせればコウボウムギというわけだ。
  しかし、筆の由来は雄花ではなく、茎の節にある毛のような古い葉鞘を筆に見立てたものだという説もあれば、見立てたのではなく実際に筆にしていたものだという説もあり、コウボウムギの別名をフデクサという。万葉の歌人柿本人麻呂は筆を作るためコウボウムギを栽培したといい、島根県江津市真島ではコウボウムギから作る筆を人麻呂筆と呼んだという。人麻呂は天武朝(673~686)から持統朝(686~697)の役人で、石見の国(現島根県西部)に赴任しそこで没したといわれる。弘法大師より少し古い時代のことなので、フデクサから後にコウボウとなったといえないこともない。
  はたまた、筆とは関係ないという説もある。弘法大師は伝説に満ち溢れた人物であり、全国いたるところに井戸を掘りあて、温泉を見つけ出し、寺院を建立している。薬草や作物もしかり、貧窮する庶民を救うありがたい知恵を授けていただいたのはいつのまにか弘法大師となるようである。カワラケツメイ(マメ科一年草)の葉をお茶にしたものは弘法茶と呼ばれ、ヒエの代用となるシコクビエのことを弘法稗という。これらには、弘法大師が飲んだとか、四国から持ってきたとかいういわれが伝わっている。そして弘法麦といえば、弘法大師が飛砂防止のために植えたという。あるいは、その実はかつて食用にされたといい、不毛の砂浜に麦よりも大きい実を実らせるのは弘法様の徳による仏のお慈悲とも。
  いずれにしても伝説まじりの話、好きな物語を選ばれたし。
コウボウムギ100606蒲池海岸.jpg
コウボウムギ 2010.6.6. 愛知県常滑市蒲池海岸



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